その日、私は明け方の家路を辿っていた。
途中、いつものコンビニの前を通る。
今ではもう習慣になったように、ガラス越しにカウンターに目をやる。
そこに彼の後ろ姿を認めるはずだった。
身ぐるみ剥がされてもなお、静かな微笑みをたたえた、寛容さと謎を秘めた背中を見るはずだった。
しかし。
その日、そこに彼は居なかった。
私は我が目を疑った。
そして、立ち尽くした。
店内を見回してみるが、そこにあるのはごく普通の日常だ。
無機質な蛍光灯の灯りと、少しくたびれた空気。
かつて彼が存在した事を示すものなど、何ひとつ見当たらない。
この薄ら寒さはなんだろう。
凍てつく風のせいばかりではないようだ。
オーケー、
認めよう。
これを喪失感というのだ。
こうして、彼は姿を消した。
前回のブログを更新した2日後のことである。
私が公の場で言及した事が、重大な変化をもたらしたのかもしれない。
触れてはいけない事だったのかもしれない。
彼には、あの日々が平穏だったのかもしれない。
だとすれば、私が彼の平穏を奪ったのだ、あるいは。
彼が姿を消して10日が経つ。
答えは、未だ、無い。
2011/12/04/ at 11:56 AM
彼は薄々感じていた。
そう、いつも赤いベストの事を気にかけてくれている一人の女性の事を…。
これ以上彼女に心を痛めさせてはいけない。そう思った彼は人知れずゆっくり脚を一歩踏み出し、豊かな物溢れる場所に別れを告げた。
まるで赤いベストを探す永遠の黄色い旅人のように…
終わりなき旅路なのか?…
2011/12/04/ at 1:20 PM
もしや、あなたのように思ってる方が他にいて店員さんに言って連れて帰ったのかも。今頃あったかく着てホットココア飲んでるかも
2011/12/05/ at 8:24 PM
《ちーなべ 様》
素敵な一節をいただき、ありがとうございます。
感動いたしました。
赤いベストを求める旅。
続編を書けることを期待しつつ、彼との再会を願う毎日でございます。
2011/12/05/ at 8:29 PM
《JT 様》
そうですね。
心温かい方の お家に住まうことになったのなら、安心です。
ぜひとも、ホットココアにハチミツもつけてあげたいところですね。